brokeback mountain

第78回アカデミー賞候補作が発表されてすぐ、受賞予想を
主要8部門のみ、本命◎、応援している対抗馬△、で表記し、
「アカデミー賞予想は、作品を見てなくてもできる!」
「自分も毎年、主要部門は確実に半分以上、当てている!」
「そんなに難しくない」と、豪語してから約1カ月…。

日本時間の3月6日、授賞式が行われ、結果が発表された。
だいたい予想通りだったけど、皆さんの予想は当たりましたか?

まずは、勝手な総評と個人的な感想から…。

今回は派手な大作が少なく、社会派の問題作が多かったせいか、
デカプリやイーストウッドらがいた昨年の授賞式と比べると
客席も地味めで、総合司会も日本人には馴染みの薄い地味な
TV系の人(?)ということで、全米視聴率も前回より8%も
落ち込んだらしい。授賞式も「粛々と進められた」って感じで、
大きな盛り上がりもないまま最後の作品賞発表となった……
が、最後の最後に会場が予想外の大興奮に包まれた!

その直前、監督賞のプレゼンター、トム・ハンクスが最多8部門
ノミネート作『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督に
オスカー像を手渡し、作品賞も同じかな、と誰もが思っていた。
なぜなら「監督賞を受賞した映画が作品賞にも選ばれる」という
パターンが過去の例を見ても圧倒的に多いからだ。

ところが最後のプレゼンター、ジャック・ニコルソンが登場すると、
初めて会場が異様なムードに様変わりした。そう、これがいつもの
アカデミー賞授賞式だ!……そして、いつにもましてシワ枯れ声の
ジャック・ニコルソンが、受賞作を読み上げる。衝撃が走った。

「ぐらぁ~しゅ」(そして、ニヤリ……ジョーカーの笑顔でした)

その瞬間、「えっ?」と思わず声をあげてしまった。会場でも、
あちらこちらから絶叫がこだましていた。プロデューサー兼任の
ポール・ハギス監督が脚本賞受賞に続き、再び壇上に上がる。
受賞作『クラッシュ』と同様、奇跡が起きたようだった……。

実は、6部門ノミネート中、編集・脚本・作品の3部門で受賞
した『クラッシュ』は数日前、「2005年の最も俗悪な作品」に
選ばれたと報じられていた。この選定基準は、猥褻なシーンの
数とセリフにおける俗悪な言葉の数の合計で、最も多い作品が
選ばれるというもの。まるで『クラッシュ』を選ばないよう、
投票者を牽制しているかの如きタイミングで発表されたので、
このニュースをネットで見た時、やっぱり『クラッシュ』には
相当な逆風が吹いているなあ、と思った。

決して、「大穴」候補が受賞したから皆、驚いてるんじゃない。
上述のような理由で大本命の圧倒的有利が不動のものになった、
と皆が感じていたから驚いたのだ。そこんとこを勘違いして、
「大穴」が受賞した、なんて書いてる記事をいくつか見たが、
とんでもない勘違いだ。最初から『クラッシュ』は、明らかに
『ブロークバック・マウンテン』の最大の対抗馬だった。

もう一つ。同性愛を描いた『ブロークバック・マウンテン』が
作品賞を受賞しなかったというだけで、「ハリウッドは保守的」
などと、知ったようなことを書いてる記事もいくつか見た。が、
上述のように『クラッシュ』は、昨年の「最も俗悪な作品」に
選ばれているほど、保守的な人には抵抗の強い描写が多い作品。
決して保守的な内容の話じゃない。思い込み違いも甚だしい。
ちゃんと『クラッシュ』を見たんか!…と言いたくなる。多分、
ミスティック・リバー』のことも勘違いしてるんだろうな。

ちなみに『ブロークバック・マウンテン』は、監督・脚色・作曲
の3部門受賞。『SAYURI』も撮影・美術・衣装デザインの
3部門、『キングコング』も録音・音響効果・視覚効果の3部門
で受賞した。作品・監督・助演女優・脚色などで多数ノミネート
されていた『カポーティ』は主演男優賞のみ、スピルバーグ監督
の『ミュンヘン』はゼロだった。また、群衆劇を得意とする監督
ロバート・アルトマンが名誉賞を受賞したのも、もしかしたら
『クラッシュ』勝利の予兆だったのかもしれないネ!

では、主要8部門の受賞結果と個人予想の戦績を発表します!

■作品賞:『クラッシュ』…応援対抗馬△だったので、引き分け?
■監督賞:アン・リー(ブロークバック・マウンテン)…◎、的中!
■主演男優賞:フィリップ・シーモア・ホフマン(カポーティ)的中!
■主演女優賞:リース・ウィザースプーン(ウォーク・ザ・ライン/
       君につづく道)…これも応援対抗馬△で、引き分け?
■助演男優賞:ジョージ・クルーニー(シリアナ)…大ハズレ!
■助演女優賞:レイチェル・ワイズ(ナイロビの蜂)…◎、的中!
■脚本賞:ポール・ハギス、ボビー・モレスコ(クラッシュ)的中!
■脚色賞:ラリー・マクマートリー、ダイアナ・オサナ
     (ブロークバック・マウンテン)…アテ勘で◎、的中!

 戦績は、5勝1敗(2引き分け)……悪く捉えても、5勝3敗で、
「毎年、確実に半分以上は当てている」の公約は果たせました(笑)

……が、少し言い訳。主演女優賞は、どちらを本命予想とするかで
迷ったんだけど、あまりよく知らない女優を「応援したい対抗馬」
に挙げることができなかったため、本命候補二人のうちの知ってる
方(リース・ウィザースプーン)を応援したい対抗馬とし、本命を
ハズしてしまったというワケ……最も悩んだ助演男優賞は、途中で
「本命を変えたくなった」と弱気のコメントをしていた通りの結果
予想記事のコメント欄参照=笑)となってしまいました!

でも、作品賞だけは、言い訳するまい!(笑)

やったね、『クラッシュ』! おめでとう、ポール・ハギス!
次は、また『ミリオンダラー・ベイビー』のコンビ復活で
クリント・イーストウッド監督作品の脚本。楽しみだね!