malpaso

(前回の続き……写真は、この映画とは関係ありませんが、
このマルパソのロゴの帽子が欲しいなあ、と思って……笑)

今、全米で最も売れているクリント・イーストウッド関連
(監督のみ、出演のみも含む)作品のDVDは?

これが実に意外な結果で驚いている。答えは、
『荒鷲の要塞』(1968年)という戦争映画だ。

なんと40年近く前の主演作……驚いたのは、それだけじゃない。
正確にはリチャード・バートンが主演で、イーストウッドは二番目
という映画だからだ。今となっては、イーストウッドの名前が
最初に出て来ない極めて珍しい映画とも言える。最近の監督作
と『ダーティ・ハリー』シリーズ程度しか見たことのない人には、
特にこの結果を知ってほしい。つまり、いかにイーストウッド
というスーパースターがどういうところで支持されているのか、
DVDの売れ筋で窺い知ることができるからだ。ちなみに、
一位は『荒鷲の要塞』、二位は『マディソン郡の橋』(1995年)、
三位は『アウトロー』(1976年)、というのがTOP3。

二位の『マディソン郡の橋』は一応、10年以上前の映画だが、
イーストウッドのキャリアの中では、まだ最近の映画、って感じ。
それほどイートウッドのキャリアは深遠で、適当に数本見たぐらいで
いい加減なこと書いてるような記事を見ると腹が立ってくる。
この映画に関しては、これまでの彼のキャリアの中では異色な
感じだが、これ以降の彼の作品を見ていると異色な感じはあまり
しないかもしれない。詳しくは、またの機会にゆっくり話そうと思う。

三位の『アウトロー』は、イーストウッド監督主演の西部劇の代表作
だから、当然の結果!……南北戦争のドサクサで軍隊に一家を惨殺
された男が、戦争が終わってからも一人軍隊に対して戦争を続ける
という、全盛期のイーストウッドが堪能できるアクション映画だ。
そういう意味で、この映画は大好きだ…(総合評価★★★★!)
当時はアメリカ建国200年記念作品の一本として公開された。



ワーナー・ホーム・ビデオ
アウトロー 特別版

一位の『荒鷲の要塞』も、当然のことながら面白い。第二次大戦中の
ドイツを舞台に繰り広げられるスパイ・アクション的なノリの話だ。

1968年といえば、ハリウッドで仕事にあぶれたイーストウッドが、
イタリアに渡ってマカロニウェスタン・ブームの顔となり、
主演スターとして逆輸入される形でハリウッドに迎えられた年。

相手役のリチャード・バートンは、50年代から約30年間にわたって
ハリウッドで主役を張ってきた英国を代表するスター。特に60年代
は、エリザベス・テイラーと『クレオパトラ』で共演後、結婚・離婚を
繰り返す世紀のロマンスでゴシップを騒がせ、まさにキャリアの
最盛期にあった頃の主演作。
対するイーストウッドは、人気急上昇中とはいえ、初のハリウッド
大作への出演で、まだまだ初々しさが残っている頃。

そんな二人が、英米混成チームの代表として特殊任務を果たすべく
ドイツの要塞へ潜入する。目的は二重スパイを割り出すこと……が、
潜入チームにも二重スパイがいると知って、「なんじゃ、そりゃ?」
と、困惑するイーストウッドの顔がアクションより笑わせてくれる。
イーストウッドはいつも理性を失うことなく、困惑する演技がいい!

しかし、ネタバレなしに、この物語を紹介するのは難しいなぁ(笑)。

とにかくイーストウッドは撃ちまくる、そのケーブルカーでの戦いは
特に有名(特撮は40年近くも前の映画なので、文句は言うまい)。
最後に、イーストウッドが「今度こういう複雑な作戦をやる時は、
イギリス人だけでやってくれよな」と吐き捨てる、それがまた
いいんだよね、バリバリのイーストウッド的な発言で!(笑)

この複雑な戦争スパイ映画の脚本を書いたのは、イギリスの著名な
ベストセラー作家、アリステア・マクリーン。彼の小説は、60年代~
70年代にかけて十数本も映画化されているが、『荒鷲の要塞』は
初めて最初から映画のために書かれた物語で、小説になったのは
映画化の後だ。とは言え、彼の小説で最も英米で売れたのが、
この小説なのだ。間違いなく、映画も小説も、最も彼らしい傑作と
言えるだろう。彼の最も有名な作品『ナバロンの要塞』(1961年)と
同じく、戦争冒険小説的な色合いが強い作品で、そういう映画が
70年代以降(ベトナム戦争以降)、ほとんど製作されなくなり、
ヒット作の続編として作られても『ナバロンの嵐』(1978年)の
ように、オールスターキャストでもヒットしなくなってしまった
のは、寂しい限り。時代の要請で仕方がないんだろうとは思う
けど、今、戦争映画と言えば、ほぼ100%、反戦映画だからね。
たまには冒険アクション的な戦争映画も見たいと思ってしまう。

『荒鷲の要塞』は、戦争冒険映画というジャンルが成立し得た
最後の時代の傑作ではないだろうか(総合評価★★★★!)……



Alistair MacLean
Where Eagles Dare (Adrenaline Classics Series)



Alistair MacLean
Where Eagles Dare
特にオープニング、小太鼓の音が次第に高鳴り、
ブラスの音が重厚にかぶさるメインタイトルの音楽は、迫力満点!
あまりにその音楽が好きで、昔レコードを買ってしまったぐらい…
(笑)。日本ではCD化されていないのではないかと思うけど、
重苦しいサスペンス音楽と派手なアクションシーンの音楽の対比が
強烈で、しかもアルバムの最後には劇中に使われた第二次大戦当時の
ムード音楽なども入っていて、なかなか楽しめる出来の一枚でしたヨ。

作曲のロン・グッドウィンは、後に『ナバロンの嵐』でも
快活な戦争冒険映画的音楽で楽しませてくれた人。実は、
このテーマ曲、公開当時から結構好きで、レコード化されなかったのが
残念でならなかった。その後、CDにはなったのかな?
しかし、なぜかカセットテープで、この音楽を持っている。
不思議だ。どうしてなんだか、いまだによく憶えてないけど(笑)
……今でも、たまにこのテーマ曲が頭の中を過ったりする。
『荒鷲の要塞』とは全然、違うタイプの曲なんだけどね。



ワーナー・ホーム・ビデオ
荒鷲の要塞